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学位論文

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  2. 2020年度卒業論文要旨

井上 耀介

学生自治寮という共同体 ―北海道大学恵迪寮における共同生活と自治ー

   【キーワード:学生自治寮、自治、共同体、個人、分人】

 本稿は、北海道大学恵迪寮におけるフィールド調査により、恵迪寮の寮生はなぜ共同生 活や自治を営み、どのように成立させているのかを明らかにすることを目的とする。第1 章においては、本論の問題意識が「個人」「共同体」概念にまで及ぶことを提示した後、 学生寮、共同体、個人の各概念に関する先行研究を検討し、本研究の立場を示す。第2章 では、調査の対象である恵迪寮に関する基本的な情報と歴史について概説する。第3章で は調査の概要、および倫理上の注意点について述べる。
 第4章では、フィールド調査の結果から恵迪寮における生活の模様を描く。恵迪寮は「部 屋の集合体」として見ることができるが、その部屋の形態は〈複数〉と〈個室〉とに分類 され、それぞれ異なる様式の生活を営んでいた。〈複数〉部屋においては、贈与交換等の 慣習や「企画」の存在等から「巻き込む力」の作用が見出された。ところが、それは〈個 室〉形態の部屋にまで波及しているとはいえないことが明らかとなり、〈複数〉と〈個室〉 の間には「壁」があることが示唆される。続く第5章では、その「壁」を越境した事例の 検討を通して、「壁」とは厳然とした分断を意味せず、またそれを越境する理由について は学業という外的な要因が関係していることを示す。続いてそこに「分人」的な発想を導 入することで、「開かれた自己」と「閉ざされた自己」からなる新しい寮生像を示す。最 後の第6章では、恵迪寮におけるフィールド調査の結果を総括し、「巻き込む力」とそれ に伴う「楽しさ」が共同生活を成立させているという結論を示す。さらには、本稿の内容 が共同体論や個人論にどのような示唆を与えるかを述べるとともに、「巻き込む力」の一 般化により、自己と寮とを認識の上で隔てていた「壁」の問い直しがなされる。

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