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- 2020年度卒業論文要旨
近江 芹菜
「ハーフ」のエスノグラフィー ー4名のライフストーリーよりー
【キーワード:ハーフ、日本人、よそ者、自己認識、相互行為】
本研究は、「ハーフ」と呼ばれる人々がどのような自己認識を持っているのか、またその背景にはどのような社会的相互作用があり、自己認識の形成にどのような影響を与えたのか、を明らかにすることを目的としている。
本論文は10章構成である。第1章では、前述の研究目的と背景を述べる。第2章で
は、「ハーフ」の定義や日本に暮らす「ハーフ」の多様性、「ハーフ」という言葉が浸透するまで呼称がどのような変遷をたどったかなど、「ハーフ」に関する事実関係を確認する。第3章では、「ハーフ」に関する先行研究や、本論文で用いる分析枠組みについて検討した上で、本論文の立場や意義を確認する。これまでなされてきた「ハーフ」研究は、外見の違いによる差別や生きづらさを大きく取り上げており、外見では「ハーフ」であると分かりにくい当事者の声が聞こえてこないこと、社会的相互作用の文脈でとらえる視点が欠けていること、の2点を指摘し、本研究の独自性の説明へと繋げている。4章では、調査の概要として、調査協力者や方法論、調査上の倫理・注意点について紹介する。第5章では、Yさん(アメリカと日本の「ハーフ」、男性)のライフストーリーについて述べる。6章では、Mさん(台湾と日本の「ハーフ」、FtX (Female to X gender))のライフストーリーについて述べる。7章では、Sさん(中国と日本の「ハーフ」、女性)のライフストーリーについて述べる。8章では、筆者(アメリカと日本の「ハーフ」、女性)のライフストーリーについて述べる。9章では、それまで見てきた4人の「ハーフ」について、自己認識の変遷や、その社会的相互作用との関連性について考察を深める。10章では結論と残された課題を述べる。
「ハーフ」の人々が自分のことをどう認識するかは三者三様だ。それでも、その認識を持つに至るまでには、周囲が自分に対して持っているイメージを認識し、解釈し、そのイメージを自分自身に照らし合わせる、という共通のプロセスがある。「ハーフ」の自己認識は、社会的相互作用の中で、自分のどのような側面を意識させられるかによって決まっていくものだと言えるだろう。