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学位論文

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  2. 2019年度卒業論文要旨

濱田 有沙

ミッションスクールのノンクリスチャン
 ―現代のミッションスクールがノンクリスチャンに及ぼす宗教観・価値観の影響ー

   【キーワード:ミッションスクール、キリスト教、教育、信仰、ノンクリスチャン】

 本研究では、実際のキリスト教系ミッションスクールへのフィールドワーク、生徒へのアンケート、卒業生への聞き取り調査を踏まえて、教育現場におけるキリスト教のミッション的環境がノンクリスチャンの生徒にどのように影響を与えるのかについて明らかにする。
 本稿は8章構成であり、1章では研究背景と先述した研究目的について述べている。
2章ではキリスト教系ミッションスクールに関する基本的な事柄を取り上げる。大まかには、ミッションスクールについての定義づけ、国内のミッションスクール状況、ミッションスクールとその周辺の歴史的経緯である。2.3から2.5まででは、まず国内のミッションスクールの歴史について述べ、その後にミッションスクールに深くかかわる女子教育、宣教師という二つのキーワードから歴史的経緯を述べる。ここではミッションスクールへの認識を重層的なものにできるよう紹介する。
 3章では諸分野の先行研究とミッションスクールについての先行研究を取り上げ、そのうえで本研究がどういった位置づけなのか紹介する。特に3.2で紹介するミッションスクールについての先行研究は、本研究が組織である学校よりも、個人である生徒に焦点を当てているものであることを明らかにするうえで対照的な研究である。
 4章では調査の概要を述べる。4.1では本研究における調査協力者が主にミッションスクールの在校生と卒業生であること、その理由について触れる。4.2以降では調査協力者の関係団体、インタビュー方法や研究倫理上の注意点について紹介する。
 5章では北星学園女子中学高等学校へのフィールドワークと生徒へのアンケートの結果を記述し、現場の様子として取り上げる。ここではマクロ的な視点の調査によってミッションスクールの実態を大まかに捉えることが目的である。5.1では北星へのフィールドワーク、生徒へのアンケート調査、教員への聞き取りの内容などを時系列で記していく。5.2では5章でのフィールドワーク全体を踏まえて中間分析をする。生徒たちの中で、キリスト教そのものに対する考えがどういった位置づけになっているのか、生徒たちがキリスト教関連の知識に精通しているという意識を持っているのかなど、北星の生徒たちの中の全体的な傾向を明らかにする。
 6章ではミッションスクール卒業生の3人へのインタビュー結果を記述し、その分析を述べる。ここで登場する卒業生の3人は今現在の信仰の有無や、ミッションスクールへの入学理由、キリスト教に対する立場などがそれぞれ異なる。そのため、6.4において3人を比較することで、マクロ的な視点の段階ではわかりえなかったミッションスクールと生徒の関係の多様さが映し出される。6.5では2回目の中間分析を行い、3人の中のキリスト教への見解の差とミッションスクールからの影響の差を整理する。
 7章で5,6章の調査を踏まえた本論全体の考察をし、さらに、ミッションスクールがノンクリスチャンの生徒に与える影響を複数のキーワードから考える。終章である8章にて本研究における調査の結果をまとめる。ミッションスクールがノンクリスチャンの生徒に与える影響は大まかには一定の方向であり、それはキリスト教そのものへの考えを肯定的または中立的なものにすることや、キリスト教に関する知識があるという自覚を指す。しかし、より個別的に観察すれば、生徒たちが受ける影響の程度には生徒間で差があり、それはもともと個人が持つ宗教的アンテナに左右されている部分があることが明らかとなる。
 ミッションスクールがノンクリスチャンの生徒に及ぼす影響は、個人のもともと持っている宗教への感受性に左右されながらも、たしかに存在する。本研究では個人の内面に迫ることでミッションスクールが生徒に与える影響の程度の多様性を明らかにしたが、これは同時にミッションスクール研究が今以上に深掘りの余地があることを示している。

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