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- 2019年度卒業論文要旨
泉 友花
化石採りのエスノグラフィー ―北海道地域の化石採りにおける所有概念の分析―
【キーワード:化石採り、ANT、北海道、所有、法律、商業】
本論文は七章で構成されている。序論では研究テーマ決定のきっかけと「化石は誰のものなのか」という研究設問について紹介する。本論文では化石を「森林の産物」と見なし、その所有について分析を行う。法律に基づいて考えると化石はその土地の所有者のモノとなり、北海道においては大半が国のモノと判断することができる。そんな中「ハンター」と呼ばれる人々が化石採りを行う。これはあくまで法律上森林窃盗罪に抵触する行為である。しかし実際に彼らが取り締まりを受けることはほとんどなく、彼らが採集した化石が博物館に寄贈されるといったこともまれではない。よって、本論文では化石は法律ではなく実際的に誰に所有されているのかという問いについて分析を行うものとする。第二章では従来の所有の考え方や採集に関する先行研究と、本研究のテーマを比較・考察する。特にストラザーンの所有に関する考え方を主に取り上げる。第三章では化石採りという行いについて詳しく記述する。ここで、実際に化石採りをする方法や採れる場所、採った化石の処理方法、化石採りにまつわる法律などについても述べる。とくに森林窃盗法についてはこの章で触れる。第四章は調査の手法や倫理上の注意点などについて述べる。第五章では「盗み」というワードを用いて国や道など土地の所有者による化石の所有の在り方と、そこから化石を持ち出す行為の複雑な関係性を明らかにする。この章では国や道による化石の所有の在り方について特に言及する。第六章では「翻訳」という概念を軸に、「ハンター」に所有された化石のネットワークの広がりと、そこから生み出される連鎖について述べる。ここでは具体的な翻訳の例としてむかわ町のむかわ竜を紹介する。最後に第七章で「化石は誰のものなのか」という問いに対する結論として、化石の採集家、すなわち「ハンター」による化石の所有の在り方を述べ、残された課題について論ずるものとする。