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学位論文

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  2. 2019年度卒業論文要旨

三浦 里樹

着物観光の人類学 ー観光地京都における着物レンタルとその役割―

   【キーワード:観光⼈類学、京都、着物レンタル、伝統⾐装、パフォーマンス 】

 本論では、第1章で京都において観光客が着物を着て観光することとその⾏為の裏にあ る京都の「古都」としての性質を明らかにすることを研究設問として提起する。第2章では これまでの研究を検討し、本研究の⽴場を⽰す。本研究は、ゴフマンに始まりマキャーネル が観光に援⽤した表舞台と舞台裏の⼆元論を発展させてイデンサーが主張した「パフォー マンス論」と、⼈間の営みである「装い論」を融合した⽴場をとり、⽇本の伝統⾐装である 「着物」を事例に、観光における⺠族⾐装のパフォーマンスを分析する。そしてその舞台に は、歴史的・⽂化的・ノスタルジックな場所性の強い京都を採⽤する。
 第3章で本研究のフィールドであるオーバーツーリズムの京都の歴史や現状、扱う事例 となる着物や着物レンタル店の紹介をする。京都は今では世界的に有名な、⽇本の代表的な 観光地と⾔えるが、最近ではマナーの悪い外国⼈観光客がいたり、あまりにも観光客が多す ぎて地元の⼈の⽣活に⽀障を来していたりとオーバーツーリズムの状況である。このよう な中で、着物観光は外国⼈観光客の増加と⽐例するようにして増加してきた体験型観光で ある。続く第4章では、本研究の研究⼿法が⽂化⼈類学的、観光社会学的⼿法に基づいてい ることを説明する。第5章では筆者が実際に着物で京都を観光した体験を元に着物観光の 様⼦を描き、着物レンタル店の分布や多様性を紹介する。
 そして第6〜8章では観光の表舞台と舞台裏の枠組みを⽤いた分析を⾏っていく。第6章 で着物観光をする観光客側に焦点を当て、観光客が求める真正性や観光客のパフォーマン スの意味について分析する。第7章で京都市や京都の伝統産業が何を意図して着物観光を 推進しているのかを基に着物観光を考察し、着物観光は実は⽂化振興を狙ったものであり、 それが⾃然と観光振興へとつながっていったことを明らかにする。第 8 章では関係するさ まざまなアクターの視点から着物観光を描く。そして第9章において、着物観光には表舞台 とも舞台裏とも⾔えない中間領域である着物レンタル店の存在があることを提⾔し、⽇本 の歴史を多く抱えている「古都」である京都だからこそ可能となる観光客のパフォーマンス の役割を説明した上で、観光客が観光地でパフォーマンスをすることでかつての京都の姿 を想起させ、伝統産業の活性化に貢献し、歴史的観光地がかつての姿を⾒るための⼿助けと もなっていると結論づける。

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