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- 2019年度卒業論文要旨
庄子 佳佑
「緑」の形
【キーワード:縁、人間関係、葬儀社、共同体、参列者】
序章:活動が確認される明治期から現代に至るまでの葬儀社と葬儀の在り方の変遷を見ていく。葬儀が明確に商売として扱われ始めたのは明治期ごろであったが、現代の様な葬儀の執行を請け負うものでなく、葬列を組むために必要な棺桶などの道具の貸し出しのみを行っていた。大正期になると都市部に人口が集まり始め、葬列を組まない「告別式」のスタイルが生まれた。葬儀社が葬儀執行を担う高度経済成長期以後になると、それまでは結婚式の運営を主な業務としていた互助会が葬儀業に参入し、結婚式のノウハウを適用した葬儀を行うようになった。また地方では労働力の枯渇、都市部では若者の知識不足といった問題が起き、葬儀社と互助会が多く成立し、葬儀に独自のサービスを付与することで市場競争が激しくなっていった。
本章:本章では先行研究を基に、葬儀の外部委託化が一般的になる以前の葬儀における、遺族を含む葬儀の参列者の関係性を明らかにする。更に葬儀社のインタビューと筆者の経験をもとに、現代葬儀における参列者の関係性を明らかにする。
葬儀の外部委託化が進む以前では地元の共同体が葬儀の担い手であった。滋賀県甲賀郡の事例を基に、共同体の維持が困難になっていくにつれて担い手が葬儀社と移っていく様相から逆説的に共同体という人間関係が葬儀に現れる「縁」であることを導いている。
現代葬儀についてでは、葬儀社のインタビューと筆者の葬儀参列の経験をもとに、葬儀社が形作る葬儀では故人と参列者という新たな関係性が葬儀に現れていることを導いている。
終章:終章では本章で明らかにした過去現在の「縁」の在り方を比べ、当初の疑問である縁の希薄化について述べている。共同体という「縁」はその力を弱めたものの、新しく出現した故人と参列者の間の「縁」によって葬儀は現代においても人と人の繋がりを再認識する場として機能し続けていると結論付けた。