教授
権 錫永KWEON Seok-yeong
- 研究室
- 文学部棟517
- kweon(a)let.hokudai.ac.jp
- URL
- 北海道大学文学研究科・文学部 権錫永のページ
私の専門は日本近代思想史、韓国文化史・社会史です。知識人の思想を縦糸、公文書などの史資料を横糸として日本近代・植民地の歴史を描いていく、それが私の研究です。日本の帝国主義とは何だったのか?それを「悪」とする前提から離れて、根本的かつ理性的な批判を繰り返しています。「帝国主義」は日本近代を貫く大きな問題であり、学生の皆さんの思考力を育てる上でも最高のテーマだと言えるでしょう。
「帝国主義」への関心は、「植民地とは何か」という問いにもつながります。植民地朝鮮の実相を明らかにするために私が選んだのは、オンドル(暖房システム)・白衣・陶磁器といった生活文化の研究です。韓国で出版した『オンドルの近代史』(2010年)はその成果の一つ。オンドルの近代史はそのまま帝国日本と植民地朝鮮の「重なり合い、絡まりあった歴史」です。それは日本・日本人を抜きにして語れない、隠れた日本近代史の一部分なのです。
学生へのメッセージ
私の研究を支えているものは、「何事も自明視しない」姿勢です。自分の中にあるその特異なものを、私は「外国人の視点」と呼んでいます。日本を研究するときだけでなく、植民地朝鮮を考えるときにもそれは変わりません。研究者としての私の心は常に、魅力溢れる古都を訪れた旅人の心です。私は、できるだけ「境界に立つ」人でありたいとも願っています。一つの社会にどっぷり浸からないということです。そうでなくては、日本と韓国という二つの社会に対して「外国人の視点」で望むことはできないでしょう。どちらからも離れず、しかしまたどちらからも「他者」であり続ける―、ときには寂しさも感じますが、魅力的な人間のあり方の一つだと思います。
最後に宣伝を一つ。朝鮮研究を志す学生のために、大学院の授業をもう一つ開講し、発表と質疑応答すべてを韓国語で行うようにしています。韓国語による学会発表や論文作成も可能です。
主な業績
- 『온돌의 근대사-온돌을 둘러싼 조선인의 삶과 역사』[和訳:オンドルの近代史-オンドルをめぐる朝鮮人の暮らしと歴史]一潮閣(ソウル)、2010年
- 「일본의 초기 제국주의론과 도덕 담론-국가적 도덕과 세계적 도덕, 또는 국민적 입장과 인류적 입장-」[和訳:日本の初期帝国主義論と道徳をめぐる議論-国家的道徳と世界的道徳、もしくは国民的立場と人類的立場-]、『근대전환기 서구학문의 전파와 동아시아학문』[和訳:近代の転換期における西欧の学問の伝播と東アジアの学問](선인、2013年、ソウル)所収
- 「「北方」論のイデオロギーと戦略-〈南方-北方〉の対立構図に注目して-」、『歴史評論』第658集、2005年2月
- 「日本における統制とプロパガンダ」、『岩波講座文学 第二巻 メディアの力学』(岩波書店、2002年)所収
- 「帝国主義と「ヒューマニズム」-プロレタリア文学作家を中心に-」、『思想』第882号、1997年12月